.
実際のところ学生2名を指導者1名で指導するのはどんな感じなのかな?
.
こんな人のための記事です。
.
平成30年に理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(以下、指定規則)が改正されました。
臨床現場の療法士にとってのこれに伴う最大の関心事は、実習指導者に対して臨床実習指導者講習会の修了が義務付けられたことかと思われます。
改正後の指定規則が適用されるのは2020年度以降の新入学者です。
そのため、2022年度以降のほぼ全ての評価実習・総合実習において、実習指導者が臨床実習指導者講習会を修了している必要があることが予想されます。
ここで問題となるのは、臨床実習指導者講習会修了者が全国の各施設に満遍なくいるような状態を作れるのか?ということです。
臨床実習指導者講習会修了者のいる施設に偏りが生じた場合には、今まで以上に一部の施設・一部の療法士に実習生が殺到することになりかねません。
このことは、2019年度に私が参加したいくつかの養成校の臨床実習指導者会議でも指摘されていました。
各養成校も危機感からか積極的な臨床実習指導者講習会への参加を呼び掛けていました。
.
このように臨床実習指導者の不足に対する懸念から、近年改めて注目を集めたのが、同時に学生2名を1名の実習指導者が受け持つ”2:1実習モデル”です。
.
私も、2020年度は9名の学生の主たる指導者を務め、そのうち8名(4組)はこの2:1実習モデルで指導をしました。
.
新指定規則適用の実習生を指導する前に少しでも2:1実習モデルの指導経験を積みたいという気持ちもあり、今年度は自ら志願致しました
.
そんな訳でこの記事は、
● 私の2:1実習モデルの体験談・メリット編
をまとめました。
.
2:1実習モデルに関する歴史
2009年の時点で既に河西らは以下のように報告しています
● 2009年当時の日本の理学療法士・作業療法士の臨床実習指導はマンツーマンが主流
● 急増する実習生に対して指導者が圧倒的に不足し始めている
● 欧米、アジアの諸外国で既に導入されていた2:1実習モデルが打開策となるのではないか
.
また、厚生労働省が作成する理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインでは平成27年の時点で既に実習生と実習指導者の対比は2:1程度が望ましいと記述されています。
ちなみに理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインの前身にあたる「理学療法士作業療法士養成施設指導要領について(平成11年通知)」に実習生と実習指導者の対比について言及されているかは確認できていません
.
これに加えて先述した通り、実習指導者には臨床実習指導者講習会修了が義務付けられることで、益々、実習指導者が不足してしまうことが予想されます。
ここに至って養成校としても2:1実習モデルで実習先の施設に受け入れを依頼せざるをえなくなったということかもしれません。
.
【体験談】メリット編
イントロダクションも踏まえて、ここからは私の体験から感じたものをお伝えします
.
【メリット】実習生の緊張が適度に和らぐ
各養成校の掲げる実習の到達目標を見ると、実習生は限られた実習期間で多くの課題をクリアしなければならないことが分かります。
出来る限り実習初日から学習に専念できることが望ましいです。
しかしながら、普段通う学校とは異なる実習施設という環境では、どうしても最初のうちは緊張してしまいます。
過度な緊張の中では適切なフィードバックが出来ません。
先程の自身の行動において、何が出来ていて何が不足しているのか、何を継続すべきで何を修正・改善すべきかが冷静に判断できなくなりかねません。
如何に優秀な学生であっても、適切なフィードバックが困難な状況では学習は進みません。
.
実習初期の緊張しやすい時期でも自身の隣に見知った同級生がいれば、多少なりとも緊張が和らぐのではないでしょうか?
そうすれば、速やかに学習に専念できるのではないかと思います。
少なくとも私が指導した中では、マンツーマンで指導したときと比べると、2:1実習モデルの方が実習初日から実習生が患者や職員と話をする機会が増えたように感じました。
.
【メリット】実習生同士で相談できる
.
.
一人で腰を据えてじっくりと思索に耽ることは大切なことです。
しかし、時として誰かと意見交換したり相談するなど自分の考えを口に出すことで、頭の中を整理できることも確かです。
実習生にとってはどれだけ良い雰囲気で実習に臨める施設であっても、やはり実習先の職員よりも同級生の方が率直に意見を述べやすいのではないでしょうか?
2:1実習モデルにおいては実習生同士が相談することで、自分たちの考えを整理しやすかったように感じます。
今年度、私は実習生に対してことあるごとに「2人で相談してごらん」と促していました
.
【メリット】実習生同士お互いを観察して学ぶ
2:1実習モデルでは基本的に2名の学生が行動をともにします。
そのため、一方の実習生が患者と関わっているときにもう一方の実習生はその様子を観察することができます。
このときに私は観察者となる実習生に観察するポイントを伝えて、患者と関わる実習生にそのポイントを押さえられていたかどうかをあとで伝えるように指導していました。
.
具体的には
● ROMテストでゴニオメーターを正確に基本軸・移動軸に合わせれているか?
● 腱反射を計測するときに腱に対して垂直に打腱器で叩けているか?
● MMTを計測するときに代償動作を抑えられているか?
● バランス・トレーニングを行うときに転倒防止に有効な体勢を整えているか?(このときは実習生が有効な体勢を整えているかの如何に関わらず、患者の傍で私も転倒防止に備えています)
.
このようにすると、実習生はもう一方の実習生に対して「教える」という機会が得られます。
いわゆる”アクティブ・ラーニング”と呼べる状態になるので、学習の効果はより深まるように感じられました。
.
【メリット】実習生同士で実技練習が出来る
.
.
マンツーマン方式でも、実習生が複数いる場合は実技練習ができるから同じことではないかと思われるかもしれません。
しかし2:1実習モデルでは基本的に行動をともにするので、お互いの技術的な改善点なども共有しやすい状態にあります。
加えて前項でも述べたように、実技練習の時間以外に患者と関わっている時間帯から実習生同士がお互いの技術的な課題を観察し指摘し合っています。
そのため、実習生同士の実技練習はより実のあるものなりやすいと感じました。
.
まとめ
私が学生を指導した体験から感じた”2:1実習モデル”のメリットを紹介致しました
.
● 実習生の緊張が適度に和らぎ実習初期から学習に専念しやすくなる
● 実習生同士が相談することで実習生が頭の中のことを整理しやすくなる
● 実習生同士がお互いを観察し技術的な改善点などを実習生同士で指摘し合うことでいわゆる”アクティブ・ラーニング”の状況を作ることが出来る
● 実習生同士でお互いの課題を共有しつつ実技練習ができる
.
学生指導の際の参考になったならば嬉しいです♪
ありがとうございました!!
.
コメント