【用語解説】記憶の種類と分類の仕方

ニューロリハビリテーション

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記憶って色々種類があってよく分からないな~

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こんな人のための記事です。

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理学療法士は患者さんの基本動作能力の向上を図る上で運動学習理論を活用しますが、記憶は学習と密接に関わります。

それぞれ記憶の性質への理解を深めることは、病態に応じた運動学習の促し方(課題の提示の仕方、フィードバックの仕方)をより良いものにしてくれることでしょう。

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とは言え、色々と種類もあるし分類の仕方もよく分からない。

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記憶の種類と記憶の分類を記憶できない…

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そんな訳でこの記事は、

記憶の種類とその分類の仕方

を、まとめました。

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短期記憶(広義)(一時的な記憶)

記憶はまずは保持される時間が短いか、長いかで2つに大別されます。

そのうち、保持される時間が数秒間から数時間程度と比較的短時間である記憶

感覚記憶

短期記憶(狭義)

ワーキングメモリ(作業記憶・作動記憶)

以上の3つに分類されます。

しばしば記憶の大別として短期記憶と長期記憶というように扱われますが、この場合は3種類の記憶をまとめた広義の短期記憶を意味しているかと思います。

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感覚記憶

人は視覚、聴覚、嗅覚、触覚など膨大な感覚情報を常に得ています。

しかし、特に意識したり注意を向けたりしない限りそのような感覚に関する記憶は1秒程度で失われてしまいます。

例えば、10秒前にどのような臭いがしていたか思い出せるでしょうか?

このように、人の感覚器で常に感じ取っているものの意識していないために直ちに失われる記憶を感覚記憶と呼びます。

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短期記憶(狭義)

人が常に得ている様々な感覚情報に意識を向けると、その情報を数秒間から数時間程度は保持されます。

この数秒間から数時間程度に保持されている記憶を短期記憶と呼びます。

聞き取った内容をメモする

買い物のレジで金額を聞いてお金を出す

長谷川式簡易知能評価スケールで桜・ネコ・電車と即時に繰り返す項目

これらは全て短期記憶で情報を保持している状態と思われます。

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ワーキングメモリ(作業記憶・作動記憶)

ワーキングメモリ、または作業記憶とか作動記憶とも呼ばれます。

ワーキングメモリの特徴は情報処理のシステムであることです。

記憶というと恐らく情報を保持することをイメージするのではないでしょうか?

先に説明した感覚記憶や短期記憶も情報を保持することです。

一方、ワーキングメモリは様々な複雑な認知作業に取り組む際に、必要な情報を利用できるように一時的に短期記憶として保持しつつそれを処理する仕組みのことを指します。

地図と周囲の景色を見合わせながら目的地への道を判断する(地図の情報と周囲の景色の情報を一時的に記憶しながら統合・処理している)

なぞなぞに答える(言語の情報を一時的に記憶しながら答えを推測している)

他者の相談に乗る(相手の表情、言語情報を一時的に記憶しながら適切な助言を考えている)

情報を保持するだけではなくて、それらを統合して利用する仕組みがワーキングメモリです

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長期記憶(比較的永続的な記憶)

先に述べたように記憶はまずは、保持される時間の短い、長いによって2つに大別されます。

そのうち、保持される時間が数時間以上で、さらに数日、数ヶ月。ときには数十年と比較的永続的に保持される記憶は長期記憶に分類されます。

長期記憶は

陳述記憶(宣言的記憶)

 意味記憶

 エピソード記憶(出来事記憶)

非陳述記憶(非宣言的記憶)

 手続き記憶

 プライミング記憶

以上のように分類されます。

用語の言い換え方も合わさってゴチャゴチャしてきた…

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陳述記憶(宣言的記憶)

まず、長期記憶は陳述記憶と非陳述記憶とに分かれます。

陳述記憶:意識の中で再生可能な、または、言語を介して他者に伝えることができる記憶

非陳述記憶:意識されていないような、または、言語を介して他者に伝えることができないような記憶

陳述記憶は宣言的記憶とも呼ばれます。

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先にも示しましたが、さらに陳述記憶(宣言的記憶)は

意味記憶

エピソード記憶(出来事記憶)

以上の2つに分類されます。

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意味記憶

意味記憶は一般的に言うところの知識にあたります。

言葉の意味

人の名前

物の名称

自分の住所

自分が卒業した小学校の名前

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エピソード記憶(出来事記憶)

エピソード記憶はその名の通り、個人的な経験やエピソードに関する記憶です。

エピソード記憶は出来事記憶とも呼ばれています。

中学校の卒業式の日に告白して振られたりとか

一緒にコンサートに行く約束がドタキャンされたりとか

デートで手を繋ごうとして払い除けられたりとか

エピソードの内容に偏りがあるぞ?

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非陳述記憶(非宣言的記憶)

先に述べたように、長期記憶は陳述記憶と非陳述記憶とに分かれます。

陳述記憶:意識の中で再生可能な、または、言語を介して他者に伝えることができる記憶

非陳述記憶:意識されていないような、または、言語を介して他者に伝えることができないような記憶

非陳述記憶は非宣言的記憶とも呼ばれます。

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先にも示しましたが、さらに非陳述記憶(非宣言的記憶)は

手続き記憶

プライミング記憶

以上の2つに分類されます。

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手続き記憶

手続き記憶は頭でなく身体で覚えた記憶です。

日頃、あれこれ考えないまま無意識のうちに行っていることです。

自転車の乗り方

歩行

走行

バットを振る

ボールを蹴る

もちろん、運動のスキルを意識的に身に付けるケースもあると思いますが、身のこなしの全てを言葉で説明したり、イメージの中で再生することが出来ないでしょう。

また、誰しもが無意識に身に付けている癖というものがあると思います。

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プライミング記憶

プライミング記憶とは、前に得た情報を記憶することによって無意識のうちにその後の情報に影響を与えてしまうような場合における「前に得た記憶」のことを指します。

プライム(prime)とは「呼び水を指す」という意味を持つ動詞です。

ある先行する刺激(プライマー)がその後の刺激を促通したり抑制したりと影響を与えることをプライミング効果と言います。

まさしく、先行する刺激は呼び水となっている訳です。

鹿と10回言った後に「サンタの橇を引く動物は?」と聞かれて、つい「鹿」と言ってしまう(正解はトナカイ)

「にんじん、なす、だいこん、こまつな、ほうれんうそ、じゃがいも、はくさい、れんこん」と並べられて、つい、ほうれんそうと読んでしまう(”ほうれんうそ”と書いてしあっても、野菜の名前の知識と、順に野菜の名前が並んでいるという先入観がそのように読ませる

好きな歌のメロディーを聴いて、その後に続く歌詞がスラスラと出てくる

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まとめ

.記憶の種類と分類は上の図のようにまとめられます

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① 記憶は保持する時間から短期記憶(広義)と長期記憶とに分類される

② 短期記憶(広義)は感覚記憶、短期記憶(狭義)、ワーキングメモリに分類される

③ ワーキングメモリは記憶の保持にとどまらず情報処理も含めた仕組みである

④ 長期記憶は陳述記憶と非陳述記憶とに分類される

⑤ 陳述記憶は意味記憶とエピソード記憶とに分類される

⑥ 非陳述記憶は手続き記憶とプライミング記憶とに分類される

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記憶の種類と分類の仕方に関して、整理しやすくなったならば嬉しいです♪

ありがとうございました!!

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