ワーキングメモリとその他の記憶との機能的な違い

ニューロリハビリテーション

.

ワーキングメモリとその他の記憶との違いがイマイチ分からないな~

.

こんな人のための記事です。

.

療法士は学習を促すことで患者さんの機能・能力の向上を図る訳ですが、ワーキングメモリは学習において重要な機能を果たします。

ワーキングメモリに関する理解を深めることは、病態に応じた学習の促し方(課題の提示の仕方、フィードバックの仕方)をより良いものにしてくれることでしょう。

.

とは言え、そもそもワーキングメモリの概念というのは他の記憶と比べて少々複雑です。

.

ワーキングメモリと、その他の短期記憶や長期記憶とで一体どんな違いがあるの?

.

そんな訳でこの記事は、

ワーキングメモリとその他の短期記憶や長期記憶との機能的な違い

を、まとめました。

.

.

記憶の種類

上の図は記憶の種類とその分類を表したものです。

※それぞれの記憶のより詳しい解説はこちらをご覧ください。

記憶はまずは情報を保持する時間が一時的か、比較的永続的かで2つに大別されます。

情報を保持する時間が一時的:感覚記憶、短期記憶、ワーキングメモリ

情報を保持する時間が比較的永続的:長期記憶

.

しばしば、記憶を短期記憶と長期記憶というように分けるかと思います。

この場合の短期記憶とは、感覚記憶とワーキングメモリも含めた広義の短期記憶となるかと思います。

記憶は図のような種類があり、その中でワーキングメモリは短期記憶(広義)に含まれます。

.

全ての種類の記憶に共通する機能

まずはワーキングメモリ、短期記憶(ワーキングメモリ除く)、長期記憶と問わず、全ての記憶に共通する特徴を説明致します。

.

記憶とは

① 物事を忘れずに覚えていること。また覚えておくこと。

② 過去の経験の内容を保持し、後でそれを思い出すこと。

③ 将来に必要な情報をその時まで保持すること。

④ 生物に過去の影響が何らかの形で残ること。

⑤ 必要な情報を保持しておくこと。

引用元:Wikipedia

.

記憶は上記のように説明されます。

ワーキングメモリにしても、短期記憶(ワーキングメモリ除く)にしても、長期記憶にしても経験や物事の内容を保持していることが全ての種類の記憶に共通する特徴と言えます。

「保持すること」が全ての種類の記憶の共通する機能です

.

ワーキングメモリの機能的な特徴

この図は認知心理学者のAlan Baddeleyが提唱したワーキングメモリ・モデルを元に作成したものです。

例えば、あなたが図の中の犬とペットに関して会話をしているとしましょう。

犬の話を聞き、それに対してあなたが何かしらのリアクションを取るまでにはいくつかのことがなされています。

犬の話をした内容や声の調子など聴覚情報を得て記憶する

犬の表情や身振り手振りなど視覚情報を得て記憶する

この犬はどのような犬だったか相手に関する情報を思い出す

聴覚情報、視覚情報、会話をする相手に関する情報などを統合してどのようなリアクションを取るべきか判断して行動する

.

このように

様々な情報を一時保存して

情報を統合して

状況を理解して

適切な行動を判断する

このような機能がワーキングメモリです。

情報を統合し、状況を理解して、適切な行動を判断するという機能はその他の記憶にはありません。

.

つまり、ワーキングメモリとその他の記憶(ワーキングメモリを除く短期記憶や長期記憶)との機能的な違いは

ワーキングメモリは「情報の保持」+「情報の処理」をする機能

その他の記憶は「情報の保持」をする機能

と言えます。

.

ワーキングメモリは保持した情報を元に処理を進めるという機能。一方のその他の記憶は情報を保持することだけに焦点が当てられている機能と言える。

.

ワーキングメモリは何故重要なのか?

先に述べたように、ワーキングメモリは情報を保持するだけでなく、その情報の処理を進めて適切な行動は何かを判断する機能です。

情報を処理する過程には、適切な行動をするにはどの情報に注意を向けるべきなのか、どの情報は気にしなくても良いのかの判断(情報の重み付け)を伴います。

.

運動学習を進める上で情報の重み付けは欠かせません。

歩行練習のときに杖の出し方に気を付けるべきか足の出し方に気を付けるべきか?

立位バランスを保つときに足底感覚に注意を向けるべきか景色の揺れや傾き(視覚情報)に注意を向けるべきか?

上着を着るときに腕を通す場所は上着の形や模様で(視覚情報)判断すべきか上着の手触り(体性感覚)で判断すべきか?

通常、様々な感覚情報からフィードバックを受けることで学習は進みます。

病態、能力、訓練目的など様々な状況によって、取り組んでいる練習においてどのような情報が重要となるのかは変わります。

すなわち、適切な情報の重み付けがフィードバックを最適化し、運動学習を成功させると考えられています。

.

実際、ワーキングメモリの高いほど学習の成果が挙がりやすいという報告もございます。

.

一方、療法士の立場からすると、患者さんに対してどのような情報の提示の仕方をすれば学習を円滑に進められるのかを考えなければなりません。

それまでに得た患者さんに関する情報、その時の患者さんの反応、諸々の療法士としての知識や経験などを元に、適切な判断をするには療法士自身のワーキングメモリも問われます。

つまり、運動学習の成否には患者さんと療法士の両者のワーキングメモリが重要になるのではないかと思います。

.

まとめ

ワーキングメモリとその他の短期記憶や長期記憶との機能的な違いをまとめました

.

① ワーキングメモリは「情報を保持する」+「情報を処理する」機能

② その他の短期記憶や長期記憶は「情報を保持する」のみの機能

③ ワーキングメモリは情報を処理する過程で情報の重み付けも伴う

④ 適切な情報の重み付けは練習のフィードバックを最適化させて運動学習を成功させる

⑤ 運動学習の成功には患者・療法士の両者のワーキングメモリが鍵を握る

.

ワーキングメモリとその他の記憶との機能的な違いに対してご理解が深まったなったならば嬉しいです♪

ありがとうございました!!

.

.

.

コメント

タイトルとURLをコピーしました