【解説】前庭器官の機能と解剖

ニューロリハビリテーション

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前庭器官の機能や解剖が知りたいな

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こんな人のための記事です。

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ときとして療法士は脳卒中を始めとした神経に障害を負った方に対して、学習を促すことで生活を支援します。

感覚の受容器やそれが検知した情報を伝える神経経路に対する理解を深めることは、病態に応じた学習の促し方をより良いものにしてくれることでしょう。

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実は前庭脊髄路の記事を書いている最中に「そもそも前庭器官に関する理解が不十分では前庭脊髄路の内容も分かりにくいのでは?」と考えました

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そんな訳でこの記事は

前庭器官の機能と解剖

に関してまとめました。

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主な運動経路

前庭器官の解説の前に主な運動の経路を確認しましょう

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主要な運動の経路としては以下のものが挙げられます。

皮質脊髄路(延髄錐体より下行する際に前皮質脊髄路と外側皮質脊髄路とに分かれる)

皮質赤核路・赤核脊髄路

皮質網様体路・網様体脊髄路(橋網様体からは前網様体脊髄路が下行し、延髄巨大細胞性網様核からは外側網様体脊髄路が下行する)

前庭脊髄路(前庭神経核から下行する際に内側前庭脊髄路と外側前庭脊髄路とに分かれる)

視蓋脊髄路

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今回解説する前庭器官は前庭脊髄路が機能するために欠かせない感覚の受容器です。

そのため、前庭脊髄路の機能に関して理解を深めそれをリハビリテーションに活用する前段階に、前庭器官について確認することが重要です。

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前庭器官の機能

前庭器官は内耳(耳の最深部)に位置する感覚の受容器

前庭器官は骨迷路と呼ばれる骨性の複雑な形の空洞の管と、その骨迷路とほぼ同じ形をして骨迷路の内部にある膜迷路と呼ばれる膜性の複雑な形の空洞の管の二重構造から成る

そのため前庭器官は前庭迷路とも呼ばれる

内耳は半規管、耳石器、蝸牛から構成される

前庭器官は半規管と耳石器から構成される(内耳のうち蝸牛を除いた部位)

半規管は前半規管、後半規管、外側半規管から成る

耳石器は卵形嚢と球形嚢から成る

前庭器官は頭部の加速度を検知することでバランス(平衡)を保つことに寄与する

つまり、前庭感覚=頭部の加速度

半規管、耳石器ともに内部はリンパ液で満たされている

半規管、耳石器ともに有毛細胞と呼ばれるセンサーの役割を果たす細胞を備えている

頭部が動くと前庭器官(半規管、耳石器)の内部のリンパ液が流れ、その流れの向きや速さを有毛細胞が検知することで頭部の加速度を検知する

半規管は頭部の回転加速度(角加速度)を検知する

耳石器は垂直方向の加速度と、水平方向の加速度を検知する

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前庭器官の解剖

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【図】前庭器官

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図中の番号の解説

① 前半規管

② 後半規管

③ 外側半規管

④ 卵形嚢

⑤ 球形嚢

⑥ 蝸牛管

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このうち①~⑤から成る前庭器官(前庭迷路)が頭部の加速度を検知することでバランスを保つことに寄与します。

ちなみに蝸牛管は音を検知する部分です。

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【図】前庭器官と前庭神経系の神経経路

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図中の番号の解説

⑦ 内耳

⑧ 前庭神経節

⑨ 前庭神経上核(ベヒテレフ核:nuceus of Bechterew)

⑩ 前庭神経外側核(ダイテルス核:nuceus of Deiters)

⑪ 前庭神経下核(ローラー核:nuceus of Roller)

⑫ 前庭神経内側核(シュバルベ核:nuceus of Schwalbe)

⑬ 小脳

⑭ 内側縦束

⑮ 内側前庭脊髄路

⑯ 外側前庭脊髄路

⑰ 動眼神経核(第Ⅲ脳神経核)

⑱ 滑車神経核(第Ⅳ脳神経核)

⑲ 外転神経核(第Ⅵ脳神経核)

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前庭神経核は⑨~⑫で構成されます。

ちなみ図中にありませんが、内耳の蝸牛から情報を伝達される神経核を蝸牛神経核(蝸牛神経前核+蝸牛神経後核)と呼びます。

内耳神経(第Ⅷ脳神経)の神経核は前庭神経核と蝸牛神経核から構成されています。

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前庭神経系の神経経路の詳細な機能や走行は別の機会に紹介したいと思います

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まとめ

前庭器官の機能と解剖に関してまとめました

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前庭器官は内耳に位置する感覚の受容器

前庭器官は半規管と耳石器から成る

前庭器官は頭部の加速度を検知することでバランスを保つことに寄与する

つまり、前庭感覚=頭部の加速度

前庭器官で検知した頭部の加速度の情報は前庭神経核に伝達される

前庭神経核は内耳神経の核(内耳神経の核は前庭神経核と蝸牛神経核)

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前庭脊髄路を始め前庭神経系の神経経路の理解を深める前段階としてお役に立ったならば嬉しいです♪

ありがとうございました!!

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