【解説】情報バイアスの種類 ②

臨床研究への道程

備忘録として臨床研究について学んだことを記します

今回は情報バイアスの種類について解説致します

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【復習】情報バイアスとは何か?

臨床研究において誤差とは、得られた結果と真実の値との不一致のことを指します。

誤差の大まかな分類は下図のように示すことが出来ます。

情報バイアスとは系統誤差の中でも交絡以外のものであり、アウトカムを測定する段階で発生する誤差を指します。

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情報バイアスの種類

biased follow-up(ランダムでない脱落・バイアスのかかった症例追跡)

コホート研究で最も注意すべきバイアスの一つです。

コホート研究では一定期間、対象者を追跡してアウトカムの発生の有無を確認します。

その間に何らかの都合で一部の対象者において追跡ができなくなる「脱落(drop out)」が起こりえます。

理想的には脱落が起こる場合でも、要因を持つ対象者においても、要因を持たない対象者においても、偏りなくランダムに脱落が起こることが理想的です。

しかしながら、要因の有無が脱落の発生にも関連性があった場合には、要因の有無によって偏って脱落が発生します。

例えば

要因:心不全の有無

アウトカム:転倒

としてコホート研究を実施した場合、心不全のある対象者において偏って死亡者(=追跡期間中の脱落)が多くなるかもしれません。

このような場合は、心不全のある対象者では転倒(=アウトカム)の発生が過小評価されて、真の値から大きく乖離してしまう可能性があります。

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診断バイアス(コホート研究における)

要因の有無がアウトカムの発生に関連しているというよりは、要因の有無がアウトカムの発生の判定そのものに使われている場合に起こりうるバイアスです。

例えば、以下のような要因とアウトカムとの関連を調査しようとコホート研究を実施したとします。

要因:横断歩道を信号が青のうちに渡り切れなくなった

アウトカム:サルコペニアの発生

このような場合、そもそもサルコペニアの診断基準の中には身体機能の低下として歩行速度が0.8m/s以下というものが含まれています。

この研究で要因に挙げたものは歩行速度の低下であり、サルコペニアの診断そのものに使われている事柄です。

当然、アウトカムが発生した者の多くは、診断基準そのものであるこの研究で挙げた要因を含んでいることでしょう。

このように診断バイアスがあると、要因があることでアウトカムが発生したと判定される確率が高くなります(要因というよりは診断基準そのものなのだから)。

その結果、要因のある者は極端にアウトカムが発生しやすくなり、要因のない者は極端にアウトカムが発生しにくいということが生じます。

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発見兆候バイアス(コホート研究における)

要因の有無がアウトカムの発生に関連しているというよりは、要因の有無によってアウトカムの発生を確認する検査を受けるなど、より慎重な観察や発見のきっかけになっている場合に起こりうるバイアスです。

例えば、以下のような要因とアウトカムとの関連を調査しようとコホート研究を実施したとします。

要因:重度の糖尿病

アウトカム:緑内障の発症

このような場合、重度の糖尿病患者は糖尿病性網膜症を懸念されて眼のかすみなど眼の症状があれば、念のため視野検査を受けることになりやすいかもしれません。

重度の糖尿病がある患者は、その他の一般的な人と比べてわずかな眼の症状でも視野検査を実施し、結果的に緑内障が発見されやすくなることが予想されます。

このように発見兆候バイアスがあると、要因があることでアウトカムの発生を確認する検査を受ける確率が高まってしまいます。

その結果、要因を持った者においてアウトカムの発生率・リスクが過度に大きく算出されてしまうかもしれません。

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観察者バイアス・測定者バイアス(observer bias)

観察者(研究者)が期待した結果を得たいがために、期待した結果以外の結果を見過ごしてしまう、いかなる結果であっても無理矢理自身の期待する結果に合わせるように理論付ける、臨床的には無意味な結果でもいかにも意味があるかのように観察者に都合良く解釈する、という現象です。

例えば

ある理学療法士が歩容を変化させるとして何かしら治療を行った後、歩行の安定性、耐久性、速度の指標に変化がなく、また、周囲の療法士も変化を判別できないが、治療を行った本人だけがいかに良い変化があったかを熱弁する

自身が失敗したときは周りの他人が悪いと言い、周りの他人が失敗したときはその人の責任だと言う

宗教団体による霊感商法の被害者救済に尽力してきたとする弁護士が、その宗教団体と政府閣僚との接点が発覚した際には軽微なものでも「けしからん!!」と厳しく非難しながら、その宗教団体と野党議員やテレビ局にも接点が発覚した際には「関係性の濃淡、線引きの基準を作る時期ではないか」と言い出す

これらは観察者バイアスと言えます。

日本のテレビに出演している一部のリベラルの知識人にも当てはまりますね♪

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曝露疑いバイアス(exposure suspicion bias)

ケース・コントロール研究で生じやすい現象です。

研究者(面接者)が研究参加者(被面接者)の疾患の状況を把握している場合に、研究参加者(被面接者)がケースかコントロールかによって要因への曝露についての質問の仕方を、意識的・無意識的に変えてしまうことがあります。

つまり研究者(面接者)が研究参加者(被面接者)の疾患状況を把握していると

ケースに対しては要因への曝露について、より詳細に丁寧に質問をする

コントロールに対しては要因への曝露について、簡単に質問するだけ

このような行動を取る可能性があります。

そうすると、あたかもケースにおいて要因への曝露が多いような誤ったデータが得られてしまいます。

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最後に

今後も臨床研究に関して学んだことを記していきたいと思います

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ありがとうございました!!

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