【研究デザインの解説】ケース・コントロール研究の特徴

臨床研究への道程

備忘録として臨床研究について学んだことを記します

今回は研究デザインの中のケース・コントロール研究の特徴について解説します

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データの取り方と順序

臨床における漠然とした疑問(=CQ)を、明確で具体的な問いへと構造化した(=RQ)あとに、いよいよデータの取り方とその順序を決めなければなりません。

問いを科学的に高い水準で検証するためには、適切なデータの取り方とその順序が極めて重要です。

そしてデータの取り方とその順序によって研究方法を分類したものは一般的に「研究デザイン」と呼ばれ、研究デザインは下図のようにいくつかの型に分類されます。

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図にあるようにケース・コントロール研究のデータの取り方と順序に関する特徴としては

研究者自身が介入方法を計画していない

比較対象がある

要因とアウトカムの測定は同時ではない(要因が先に存在しアウトカムが後に発生したことが明白)

時間を遡って観察する(アウトカム発生を確認し、それより以前に要因が存在したか観察する)

以上の4点が挙げられます。

ケース・コントロール研究では、最初にケースを定義して(=どのようなアウトカムが発生したものをケースとするかを決めて)見つけます。

次にケースと比較が可能となるコントロールを探します。

先にアウトカムの発生の有無を確認していることが、コホート研究との最も大きな違いと言えます。

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ケース・コントロール研究を用いるCQの型

ケース・コントロール研究を用いるのに適したCQの型は

要因とアウトカムとの関係を調べる研究

以上の型が挙げられます。

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ケース・コントロール研究が「要因とアウトカムとの関係を調べる研究」に向いている点としては

アウトカムが発生したか否かを測定し、その後時間を遡ってそれ以前に要因が存在したかを測定するので時間的な関係が明白(横断研究だとアウトカムが先に存在し、要因の原因となっている可能性を否定できない)

以上の点が挙げられます。

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なおコホート研究と異なり、ケース・コントロール研究では発生の頻度を表す指標(有病割合、発生割合、発生率、リスク)を求めることができません。

よって発生の差や発生の比(発生率差、リスク差、発生率比、リスク比)を直接求めることもできません。

ケース・コントロール研究ではケースの要因オッズとコントロールの要因オッズとを求めて、ケースとコントロールとのオッズ比を計算することで、要因とアウトカムとの関係を示すことになります。

オッズについては次の項で解説致します

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ケース・コントロール研究におけるオッズ比の計算

ケース・コントロール研究におけるオッズ比の計算は
以下の表を参照にすると分かりやすいと思います

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オッズ(または”要因オッズ”) = 要因あり / 要因なし

ケースのオッズ = A / C

コントロールのオッズ = B / D

オッズ比(または”要因オッズ比”) = A / C ÷ B / D = AD / BC

ちなみにコホート研究で算出されるリスクの場合は
要因ありのリスク = A / (A+B) 、要因なしのリスク = C / (C+D)
で求められます

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ケース・コントロール研究の場合はコホート研究のように上の表を横方向に集計して、リスクを計算することは意味をなしません。

なぜならば、ケース(アウトカムが発生した者)の人数とコントロール(アウトカムが発生しなかった者)の人数との比を研究者が恣意的に決めることができてしまうからです。

つまり、ケース・コントロール研究において無理にでもリスクを計算しようとすると、コントロールの人数が過少ならば実態よりもリスクは大きくなり、コントロールの人数が過多ならば実態よりもリスクは小さくなってしまうのです。

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アウトカムの発生が稀なものの場合は、表においてAとCはBとDに比べて無視できるほど小さな値となるため

A+B ≒ B

C+D ≒ D

AD / BC ≒ A/(A+B) ÷ C/(C+D)

が成り立ち、オッズ比はリスク比と極めて近い値をとります。

よってアウトカムの発生が極めてまれ稀な場合には、ケース・コントロール研究の結果をもって、「要因があることでアウトカムの発生のリスクが何倍になるか」と解釈しても差し支えないとされます。

アウトカムの発生が稀でないものの場合はケース・コントロール研究の結果をもって
「要因があることでアウトカム発生のリスクが何倍となるか」
という解釈は不適切となりますのでご注意ください

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長所と短所

長所は

要因によるアウトカムであることを示すことができる(アウトカムが要因の原因だったというような因果関係の逆転が起きない)

発生が稀なアウトカムでも分析がしやすい

既存のデータを用いるため短期間で研究が可能

サンプルサイズが小さくても分析可能

以上が挙げられます。

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一方、短所は

1つのアウトカムについてしか分析できない

稀な要因の分析には向かない

利用できるのは既存のデータに限られるので測定していない要因や「第3の因子」については解析できない

コントロールの定義が難しい

発生の頻度を表す指標を算出することはできない

以上が挙げられます。

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最後に

今後も臨床研究に関して学んだことを記していきたいと思います

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ありがとうございました!!

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