【就活生必見】新卒で回復期リハ病院に入職する際の注意点

その他

最初の就職先は回復期リハ病院が良いんじゃないかなぁ~?

リハスタッフが多くて教育が充実していそうだしね!!

こんな人のための記事です。

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現在、私は回復期リハビリテーション病院に勤務しています。

しかし、現在の職場は転職後のものであり、療法士1年目で入職したのは異なる領域の職場でした。

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私は学生時代に

急性期リハ

外来リハ

2つのいずれかが初学者には向いていると考えていました。

結果的にその2つともを中心とした職場に入職することが出来ました。

その後、時間の経過とともに興味は移り変わり、結果的に現職の回復期リハ病院で働くに至った訳です。

つまり、新卒の時点では回復期リハ病院で働くつもりはありませんでした。

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それどころか実は、療法士1年目の就職先として最初に候補から外したのは回復期リハ病院でした。

何故なら回復期リハ病院は決して新卒者向けの就職先とは考えていなかったからです

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人それぞれ意見はあるでしょうが、学生時代の私はそのように考えていました。

そして、現在もこの考えは変わっていません。

こんな記事を書くと、毎年、ある程度の人数の就職者を確保しなければならない人事担当者からは怒られてしまうかも知れませんが(笑)。

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そんな訳でこの記事は

新卒で回復期リハ病院に入職する際の注意点

をまとめました。

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回復期リハ病院に関する誤解

【経験談】回復期リハ病院で見る就活生や新人療法士の見解

現在の職場である回復期リハ病院で、就活生と面接をすると次のような質問をほぼ100%されます。

教育体制は充実していますか?

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また、私の周囲の入職から間もない新人療法士からは次のような意見を耳にします。

回復期は3単位(60分間)ゆっくりと患者さんに関われるから安心です

外来は1単位(20分間)で全て完了しなければならないので焦りそうです

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ちなみにこのような就活生や新人療法士がいるのは私の周囲だけかもしれないと考えたこともありました。

しかし、いくつかの養成校の教員の先生方や、他の回復期リハ病院で働く役職者の方に伺ったところ、就活生や新人療法士には同様の傾向があると仰っていました。

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つまり、一定割合の就活生や新人療法士は回復期リハ病院に対してこのような見解を持っているようです。

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回復期リハが難しい理由

先に述べたように私の経験からすると、就活生や新人療法士の回復期リハ病院に対して次のような印象を持っているものと推測されます。

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教育体制が充実しているから安心して働ける

リハビリ介入時間が長いので焦らずに働ける

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このような意見を否定するつもりはございません。

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ただし、回復期リハ病院が教育体制を充実させたり、リハビリ介入時間を長く確保できるようになった経緯には理由があるのです。

それは決して新卒者が安心して焦らず働けることを主眼に置いたわけではないことは知っておくべきだと思います。

特に回復期リハ病院で働くことを検討している方についてはその点をご理解頂きたいと思います。

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「教育体制が充実している=業務内容が新卒向き」ではない

回復期リハ病院は全体的に療法士教育に力を入れているところが多いと思います。

もちろん、外来リハを中心とした診療所やデイケア、訪問リハ、老健など、他の領域にも教育に力を入れているところはあります。

しかし、回復期リハ病院以外の領域は在籍する療法士が少人数ということもあるので、そのような事業所では療法士教育に人手を割けないというケースもございます。

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教育体制の整っている回復期リハ病院は新卒者が働くのに向いているんだネ♪

だがちょっと待って欲しい、果たしてそうなのだろうか?

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回復期リハビリテーション病棟が制度化されたのは2000年のことです。

病気の発症後や骨折後の早期から集中的に長時間の療法士によるリハビリ介入を実施した方が、治療成績(特にADLの自立度)が良好であるとの研究結果を受けてのものでした。

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療法士が同じ時間働いたとしても、一人の患者さんに対して長時間関わるほど一人の療法士が治療できる患者さんの人数は減ってしまいます。

つまり、療法士が治療に割ける時間が1日に6時間(18単位)あったとして

一人の患者さんの治療に20分間使う=1日に18人を治療できる

一人の患者さんの治療に60分間使う=1日に6人を治療できる

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そのため、回復期リハ病院では同数の患者さん・利用者さんを相手にする他の領域と比べた場合、多数の療法士が在籍する必要がある訳です。

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2000年以降、全国的に回復期リハ病院が一気に増加するとともに、回復期リハ病院は在籍する療法士数を急増させました。

少しずつ人数が増えるならばマンツーマンの個別的な指導でも対応可能かもしれません。

しかし、指導者よりも多くの新卒者が次々と入職する状況にそれでは教育が追い付きません。

つまり次々と入職し急増する新人・若手の療法士の教育に対して、個別的な対応だけでは限界があったので療法士教育を仕組み化せざるを得なかったというのが実態だと思います。

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また、そもそも新人・若手の療法士でも容易に対応できる業務内容ならば、わざわざ教育に時間を掛ける必要もありません。

例えば、誤解を恐れず言うならば

2年間教育の介護福祉士の専門学校

6年間教育の大学医学科(しかも研修医の期間を含めれば合計11年間!!)

どちらが高度で専門的な知識・技術を求められるとイメージするでしょうか?

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回復期リハ病院において教育体制を整えて時間を掛けて教育しているということは、それだけ業務内容の難易度が高いことの裏返しであるとも言えるのです。

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もちろん、回復期リハ以外の領域でも高度で専門的な知識・技術は求められます。

ただし、新卒者向けの教育・研修というのはその領域で働く上での必須項目ということになります。

ある領域の全体的な教育体制の状況は、その領域で求められる最低限のレベルを表しているのです。

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つまり新人・若手療法士として最低限求められるレベルに関しては、回復期リハ病院は高い傾向がある(少なくとも回復期リハ病院で働く療法士はそう認識している)と言えます。

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「リハ介入時間が長い=ゆっくりとリハ介入が出来る」ではない

回復期リハは患者さんに長時間関われるのでゆっくりとリハ介入ができそう

これについては認識不足としか言いようがありません

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「外来リハでは20分間しか治療時間がないが、回復期リハでは60分間も治療時間がある」

この言葉の含意をどのように理解するでしょうか?

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一部の新卒者は

「同じ治療内容を、外来リハでは20分間で行わなければならず、回復期リハでは60分間も時間を掛けることが出来る」

と考えているようです。

しかしこれは明らかに誤解です。

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正しくは

「回復期リハでは有効な治療を60分間も施せるだけの幅広い知識・技術が求められる」

と認識すべきでしょう。

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例えば、飲み会の余興で場を盛り上げることを求められた場合に

20分間余興をする

60分間余興をする

どちらが困難でしょうか?

言うまでもなく後者です。

先の言葉の意図はこれと同じです。

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外来リハでも回復期リハでも20分間で治療すべきことは同じです。

外来リハでは20分間で行う治療内容を回復期リハでは60分間使って良いということにはなりません。

回復リハで時間がプラスされるのは、外来リハよりも複数の課題を解決するためなのです。

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これは、それぞれの領域における主な介入内容とそれに対して掛けることのできる時間の関係を整理するとより理解しやすくなると思います。

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表に示したのは私が経験した急性期病院でのリハ、外来でのリハ、回復期リハ病院でのリハの業務内容を比較したものです。

私の経験が含まれており、また、職場によって異なる点もあろうかと思いますがさほど実態からは掛け離れていないと思います。

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表に示した通り、回復期病院では1人あたりの患者さんに関わる時間は長くなるものの、その分、対応を求められる課題の数が多くなる傾向があります。

つまり、治療の知識・技術の範囲は広がる訳です。

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確かに、急性期病院でのリハや外来リハでも、歩行動作学習やバランス能力向上を図らない訳ではありません。

しかし、全体的な傾向を考えたときには急性期病院では廃用予防がリハ介入の中心となりますし、外来のリハでは痛みの軽減や関節可動域向上がリハ介入の中心となります。

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しかも、多くの場合、痛みや関節可動域制限の要因よりも、歩行障害やバランス障害の方が要因の方が複雑多岐に渡るため、分析には幅広い知識・技術が必要です。

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例えて言うならば

20分間でスープ1品を作る = 急性病院でのリハ、外来でのリハ

60分間で前菜からメインディッシュまでフルコースを作る = 回復期病院でのリハ

このようになるのではないでしょうか。

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また、急性期病院でのリハや外来リハと比べると、回復期リハ病院の患者は以下のような患者の割合が多くなる傾向があります。

ADL能力や基礎体力の著しい低下

高次脳機能障害、認知症が重度

そのため、多くの患者さんでどうしても一つ一つの課題遂行に時間が掛かります。

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ちなみに、ここまで色々と述べましたが、決して回復期リハと比べて、急性期病院でのリハや外来リハが簡単だと言うつもりはございません。

それぞれの領域で道を究める方はいらっしゃいますし、異なる領域の名人・達人の知識・技術に優劣を付けることはできません。

ここまでのお話は、あくまでも「新卒者に求められる最低限のレベル」を念頭に置いたときに、どうなのかを考えたためです。

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課題が狭くなればその分深い知識・技術が求められますし、

課題は分かりやすくても問題解決は難しいことはいくらでもありますしネ

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回復期リハ病院は最も厳格に治療成果を求められる領域である

どの領域においても当然、療法士には治療成果が求められます。

しかし、回復期リハ病院では制度上、最も厳格に治療成果を求められていることをご存じでしょうか?

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例としては実績指数が挙げられます。

実績指数は回復期リハ病院に制度上課せられた治療に関する主要な指標の1つです。

大まかに言うと

出来るだけ短期間で治療すること

出来るだけFIM運動項目の合計点を大きく向上させること

以上の2つを評価する指標です。

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詳細は割愛致しますが、回復期病院では実績指数が一定水準に至らない場合は、大きく収益が下がってしまう可能性があります。

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他の領域でも治療成績を求められる制度はあります。

しかし、回復期リハ病院ほど密接に療法士が関わり、かつ厳格に成果を求められる制度とはなっていません。

厳格に治療成績を求められる環境が果たして新卒者向けかと言えば、私は決してそうは思いません。

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それでも回復期リハ病院で働くメリット

散々、回復期は新卒者向きじゃないと言われてすっかりビビっちゃったよ~

そのままで記事が終わっては同業者から叱られそうなので新卒者が回復期リハ病院で働くメリットも紹介致します(笑)

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私は新卒者が回復期リハ病院で働く最大のメリットは

多職種と連携する術を新卒・若手のうちから身に付けることが出来ること

であると考えています。

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現在、リハビリ介入を必要としている方々が抱える問題は、理学療法単独で解決できるものばかりではありません。

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例えばバランス能力が低下し転倒して橈骨遠位端骨折を受傷した高齢患者さんを外来リハで担当したとしましょう。

理学療法士が手関節の機能改善と、今後の転倒予防を理学療法介入の目的に掲げたとしても

夏の暑さで食事をろくに摂っていなかった

夏の暑さで自宅に引き籠りがちだった

日中に自宅では独居となるのでその間に再度転倒しないか患者さんは不安だ

最近、少し認知症が進行しているらしくその点も家族は心配している

患者さんがこのような課題も背景に抱えている場合には、理学療法士単独の介入では上手くいかないことでしょう。

食事面では内科医や管理栄養士の力が、引き籠りや独居の時間帯への対応は地域包括支援センターの力が、認知症には認知症の専門医の力がそれぞれ必要となるかもしれません。

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既に他の誰かがこれらの問題に対応しているかもしれません。

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しかし、これらの問題を最初に気付いたのが療法士だったとしたらどうでしょうか?

果たして、患者さんやそのご家族に適切に助言をしたり、あるいは必要な他職種の協力を得るために然るべきところに相談ができるでしょうか?

もちろん、外来リハを専門とする療法士の中にもこのような対応をスムーズにできる方はいらっしゃることでしょう。

しかし、新卒の療法士にそれは難しいのではないでしょうか?

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回復期リハ病院に入院する患者さんは、ある職種単独では解決できない問題を抱える方がほとんどです。

また、そのような患者さんにも対応できるように多様で豊富なリハビリ資源を備えるべく作られたのが回復期リハビリテーション病棟という制度なのです。

新卒者のうちから常に療法士単独では対応困難な課題にも取り組むことで、自然と多職種との連携する術を身に付けることが出来ることは、何よりものメリットだと感じます。

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まとめ

新卒で回復期リハ病院に入職する際の注意点をまとめました

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「教育体制が充実している=業務内容が新卒向き」ではない

教育体制が充実したのは急増する新入職者に対応しようと仕組みを整えた結果である

教育に時間を掛けるのは回復期リハで求められる最低限の知識・技術のレベルの高さの裏返しである

「リハ介入時間が長い=ゆっくりとリハ介入が出来る」ではない

介入時間が長い分だけ複数の課題に対応することが求められる

実績指数が導入されるなど、保険制度下で回復期リハビリテーション病棟は療法士にとって最も厳格に治療成績を求められる制度である

新卒のうちから多職種と連携する術を身に付けることが出来ることは回復期リハ病院で働く大きなメリットである

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就活生で回復期リハ病院への就職を考えている方にとって何らかの参考になったならば嬉しいです♪

ありがとうございました!!

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