”ぶれ”と”ずれ”【患者の期待と提供サービスとのギャップの原因とその対策】

その他

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私たちの提供しているサービスには、常に患者の期待に応えきれていないギャップが生じる可能性があります。

質の高い医療について述べた回でも紹介しましたが、このギャップは大きく2つに分かれます。

それが”ぶれ””ずれ”です。

部門管理者は、経営理念を踏まえて患者・患者家族の要求を満たすべく部門の業務目的と目標を定めます。目標達成に向けてPDCAサイクルを回し継続的な改善に取り組む訳ですが、目標未達となった際にその原因に応じた対策が必要です。

今回は”ぶれ”と”ずれ”の違いとともに、その対策に関して説明致します。

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”ぶれ” = 信頼性

ここで言う信頼性とは、あることに取り組んだ際に得られる結果に差が少ないことを意味します。

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自動車メーカーに例えると、同じ車種を購入すれば、いつどこの工場で誰が製造してどこの販売店で購入したとしても同じ性能を持っていること消費者は期待するはずです。

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これをある病院の理学療法介入(=サービス提供)の場面に当てはめると、歩く練習をするとなれば、いつどの療法士が担当しても、同じ練習効果を得られることを患者・患者家族は期待するはずです。

もし「療法士Aと療法士Bとでは歩行練習の効果が著しく差がある」とか「療法士Aは今日と明日とでは歩行練習の効果に著しく差がある」となってしまったらどうでしょう?

患者・患者家族の立場にして見れば、「良い効果を得られるかどうかは運任せです」と言われたようなものです。とても練習する気になりません(笑)。

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もちろん、実際には患者の体調など療法士以外の要因によっても練習の効果は左右されます。しかし、そういった様々な状況に合わせて練習内容を調整して、一定水準以上の効果を引き出すことも個々の療法士に要求されるスキルなのです。

そして病院という組織に所属する以上は患者・患者家族の目からすれば、経験年数などは関係なく同じ病院の療法士です。

経験年数に関わらず、どの療法士でも同じサービスを提供する際には同じ水準の結果が得られるような体制を築く努力も管理者の役割かと思います。

冒頭の自動車メーカーの話であれば、例えそれを製造したのが熟練工であろうが新入社員であろうが、同じ種類の自動車として販売している以上は同じ品質であることを消費者は要求するでしょう。

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”ずれ” = 妥当性

ここで言う妥当性とは、患者・患者家族の要求することをどの程度的確に捉えているかということを意味します。

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自動車販売店で例えると、家族5人で来店して販売員に家族でレジャーに出掛けるために乗る車の購入を検討していることを伝えた際に、販売員がミニバンからいくつか紹介するようならば、消費者が求める自動車を的確に捉えているのではないでしょうか?

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これを地域在住の高齢者が対象患者の大半となる回復期リハビリテーション病院に当てはめてみましょう。

患者・患者家族は、病院全体として地域特性を理解し主疾患だけでなく高齢者特有の問題にも対応しつつ、治療が進められることを期待するのではないでしょうか?

もし病院全体が「グローバルな人材育成を目指しています」「スポーツのリハビリテーションを専門とする医師・療法士が大勢います」ということを前面に押し出していたらいかがでしょうか?

患者・患者家族としては「凄くレベルが高そうだけれど私の受けたいリハビリテーションとは違うな…」と別の病院を探すかもしれません(笑)。

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いくら高水準であってもサービスは相手に届いて利用してもらって初めて価値が生まれるものです。消費者の手に取ってもらえないものを提供し続けることは、ただの独りよがりです。(当サイトもそうならないよう肝に銘じます(笑))

自分たちの専門領域の知識や技術を背景に、自分たちの患者・患者家族の抱える問題・要求を的確に捉え、その解決に役立つサービスを提供する体制を築くことが管理者の役割かと思います。

冒頭の自動車販売店の話であれば、販売員が「5人家族」「レジャー用」ということを聞いた上で最初に軽トラックをおススメしたら、これは消費者のニーズを的確に捉えているとは言えないはずです。

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目標を達成できる場合【”ぶれ”がない・”ずれ”がない】

これは業務の目標を達成できる場合のイメージです。

サービスを提供することで得られる結果は、一定水準以上、かつ、安定しています。

また、患者・患者家族のHopeを的確に捉えていると言えるでしょう。

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信頼性が低く失敗する場合【”ぶれ”がある・”ずれ”がない】

これは業務の目標を達成できない原因が”ぶれ”にある場合のイメージです。

ある程度、患者・患者家族のHopeに対して「的を射ている」ものの、提供するサービスの結果のバラつきが大きい状態です。

このような場合の対策としては

  • 知識や技術をレベルアップする
  • ルールやマニュアルを徹底する(ルールやマニュアルそのものは問題なし)
  • 情報伝達を徹底する
  • 職員の体調管理(体調はパフォーマンスのムラに関わる)

以上のような対策が有効となりえます。

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妥当性が低く失敗する場合【”ぶれ”がない・”ずれ”がある】

これは業務の目標を達成できない原因が”ずれ”にある場合のイメージです。

職員全体のパフォーマンスは一定水準以上で安定しているものの、患者・患者家族のHopeを的確に捉えられていません。

このような場合の対策としては

  • 病院内のルールやマニュアルの見直し(制度改定や社会の価値観の変化に付いて行っていない可能性がある)
  • 人員配置の見直し(患者・患者家族ではなく、担当者個人の認識や信念に沿って業務が進められている可能性がある)

以上のような対策が有効となりえます。

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信頼性・妥当性ともに低く失敗する場合【”ぶれ”がある・”ずれ”がある】

これは業務の目標を達成できない原因が”ぶれ”もあり”ずれ”もある場合のイメージです。

職員全体のパフォーマンスが一定水準に達せず安定しないばかりか、患者・患者家族のHopeも的確に捉えることができていません。

このような場合の対策としては

  • 目的から見直す(部門の業務の出発点に大きな誤りや見落としがなかったか)
  • 目標のレベルを下げる(そもそも組織の力量に対して無謀な目標だった可能性がある)

以上のような対策が有効となりえます。

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まとめ

業務目標を達成できない原因は”ぶれ”と”ずれ”に大別される

”ぶれ”の対策には知識や技術のレベルアップやマニュアルの徹底など、パフォーマンスが一定水準以上で安定するための取り組みが有効。

”ずれ”の対策にはマニュアルの見直しや個人的な価値観ばかりで仕事を進めがちな人員の配置を見直すなど、制度改定や社会の価値観の変化を取り入れるための取り組みが有効。

”ぶれ”も”ずれ”も両方生じている場合の対策には、そもそもの業務の目的や目標の見直しが有効。

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いかがだったでしょうか?

私としては書いていて改めて感じたことは「コレ、まんま自分の職場じゃないか」ということです(笑)。

軽くガッカリしつつも、やはり、「抱えている夢は動かさなければいけないな」と思いました。胸に仕舞い込んでいては何にも面白くありません。

皆様も職場で挑戦している目標があれば、コメントいただければ嬉しいです。

最後までご覧いただき誠にありがとうございました!!

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